木村眼科クリニック

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院長のコラム


◆「随想」 医者の入院◆


「徒然草」の一節に、相応しくない友の一人として「病気をしない健康な人」を、よき友の一人として「医師(クスシ)」を挙げています。これを「病気で苦しんだ経験のある医師は患者の気持ちが理解できるので友とするに相応しい」と勝手に解釈しております。昨年夏に転倒して頭部打撲による外傷性慢性硬膜下血腫で約40日間入院治療を受けました。この兼好法師の言葉を念頭に治療を受けながら入院中「徒然なるままに」感じたことをお話しいたします。
入院中看護師はとても身近な存在です。ほぼ毎日点滴治療を受けましたが、点滴のたびに「木村様ですね、生年月日は? ○○を注射します」と薬品名と空アンプルを共に見ながら確認しました。誤投与防止の基本行為ですが、治療への信頼感を実感することができました。私の静脈は細いので看護師は血管確保に大変苦労し、失敗のたびに緊張しておりました。「練習のつもりでやってみて」と声を掛けると緊張が取れ成功率が上がるのが良くわかり、励ましの言葉こそ大切と感じました。
患者にとって主治医は命綱です。今回の主治医の私への対応はベストでした。入院時には本疾患の発生機序、手術、薬物治療とその利点欠点などを解りやすく説明してもらい、症状に応じて迅速に検査と治療が行われ、安心して入院生活を送ることができました。私が医師であるので「特別待遇だろう」と思われる方も多いかも知れません。しかしこの先生はそうではないことが偶然にも私のクリニックに通院中の患者さんからの話で確認することができました。「私の内科の主治医は良く説明してくれ診断も的確なので信頼し数年前から掛っています」とのことでした。日頃「患者の話を良く聞き、良く説明する」ことをモットーにしていますが、あらためて再確認することができました。
病院の設備や環境も入院患者にとっては大変重要です。
「病院にこんなにきれいなトイレがあるのだろうか」と目を疑うほど清掃が行き届いており、ペーパーの端がいつも三角形に折られている気配りには感激しました。適温で配食された食事、インターネット利用による本の注文配達も可能でした。蛇足ですが暇にまかせて不勉強だった幕末明治維新関連の本を読破しましたが、坂本竜馬の暗殺者は中岡慎太郎、孝明天皇は側近公家による薬殺死、明治維新の黒幕はグラバー商会などの「説」には興奮を覚えました。
点滴の合間の海岸の散歩は病人の心を癒す最高の「薬」でした。青い空と水平線を南下する船、波打ち際で遊ぶ子犬、灯台を背にサーフインを楽しむ若者などを見ながら潮風と美味しい空気をたっぷり味わうことのできた散歩療法でした。いわきの美しい自然に感謝です。
幸いにも病気は完治し仕事に復帰しております。入院生活を支えて頂いた多くの方々や病院職員に心から感謝しております。



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